インプラントと差し歯の違い6つ。それぞれのメリット・デメリットも解説
歯を失った際の治療法として知られるインプラントと差し歯。この記事では、見た目や治療期間、費用など6つの重要なポイントから両者の違いを徹底比較し、それぞれのメリット・デメリットを詳しく解説します。
どちらの治療法が適しているかは、患者さんの口腔内の状態やライフスタイルによって異なります。あなたにとって最適な治療法はどちらなのか、後悔しない選択をするために、まずは二つの違いを正しく理解することから始めましょう。
目次
インプラントと差し歯の違い
見た目
インプラントと差し歯では、とくに保険が適用されるかどうかで違いが出ます。
インプラントは、顎の骨に直接チタン製の土台を埋め込むため、歯ぐきから歯が自然に生えているように見せることが実現可能です。上に乗せる人工歯には、セラミックやジルコニアといった高品質な素材がよく使われます。
一方、差し歯は選ぶ素材によって見た目が大きく変わってきます。自費診療の差し歯はオールセラミッククラウンなど、インプラントと同じように審美性の高い素材を選べます。この場合、インプラントと同様に自然で美しい見た目を実現できます。
保険適用の差し歯の場合、一般的に「レジン」というプラスチック素材が使われます。費用を抑えられるメリットがある反面、時間が経つと水分を吸収して変色しやすいです。また、天然歯のような透明感はなく、のっぺりとした印象になることがあります。
治療方法
インプラントと差し歯は、治療の根本的な考え方が全く異なります。最も大きな違いは、治療の土台を「人工物」にするか「ご自身の歯の根」にするかです。
インプラント治療は、歯が抜けた部分の顎の骨に、チタン製の人工歯根を埋め込み、その上に人工の歯を装着します。チタンは生体親和性が高く、骨と結合する性質を持つため、しっかりと固定されることが特徴です。
一方、差し歯治療は、歯の根っこが残っている場合に適用されます。治療を終えた根の上に、被せ物を支えるための土台(コア)を立て、その上から人工の歯を接着剤で装着します。
寿命
治療した歯をどれだけ使えるかという「寿命」も、重要な判断基準です。
様々な研究報告がありますが、目安は以下のようになっています。
* インプラントの10年生存率:90%以上
* 差し歯の平均寿命:7年~10年
インプラントは顎の骨と結合しているため、非常に安定しています。ただし、寿命は日々のセルフケアと定期的なメンテナンスが前提です。
差し歯の寿命がインプラントより短いのは、土台となる歯根に問題が起きるためです。
どちらの治療法も、長持ちさせるためにはケアが不可欠です。
治療期間
治療開始から完了までの期間に違いがあり、一般的に差し歯のほうがインプラントより短い期間で治療を終えられます。インプラントの治療期間は、お口の状態によりますが、全体で3ヶ月から1年ほどかかります。期間が長くなる理由は、顎の骨に埋め込んだ人工歯根が骨と結合するのを待つ「治癒期間」が必要だからです。
また、顎の骨の量が不足している場合、骨を増やす手術が必要になることもあり、その場合は治療期間が延びます。一方、差し歯の治療期間は約1ヶ月から2ヶ月と短期間です。外科手術がなく、骨の結合を待つ必要がないため、スムーズに治療が進みます。
治療費
治療にかかる費用は、健康保険が適用されるかどうかで大きく変わります。
インプラント治療は基本的に自費診療となり、高度な技術や高品質な材料を使用するため治療費は高額になります。差し歯治療には、保険適用の治療と自費診療の2つの選択肢があり、保険適用の差し歯は費用を抑えられますが、使える材料に制限があり、見た目や耐久性の面では自費診療に劣ります。
自費診療の差し歯はセラミックなど見た目が自然で耐久性の高い材料を選べますが、費用は保険適用よりも高くなります。初期費用だけでなく、再治療の可能性なども含めた長期的な視点で考えることが大切です。
虫歯・歯周病リスク
インプラントも差し歯も人工物なので、それ自体が虫歯になることはありません。インプラントで最も警戒すべきなのは「インプラント周囲炎」です。天然の歯とは異なり、インプラントには痛みを感じる神経や、歯と骨をつなぐ「歯根膜」というクッション組織がありません。
一方、差し歯で注意すべきなのは、土台のご自身の歯根が虫歯になるリスク(二次虫歯)です。虫歯が進行して歯根がもろくなると、歯根破折のリスクも高まります。どちらの治療を選んだとしても、その歯を長く健康に保つためには、毎日の丁寧な歯磨きと、歯科医院での定期的なプロフェッショナルケアが不可欠です。
インプラントのメリット・デメリット
メリット
自分の歯のように扱える
インプラント治療の最大のメリットは、ご自身の歯とほとんど変わらない感覚で生活できることです。顎の骨に人工の歯根を直接埋め込み、その上に人工の歯をしっかりと固定します。顎の骨に直接支えられているため、硬い食べ物でも気にすることなく、しっかりと噛めます。
人工の歯には、セラミックなどの審美性の高い素材が使われます。このように、機能面でも審美面でも、天然の歯に近い状態を取り戻せるため、日常生活の質(QOL)を大きく向上させることができます。
耐久性が高い
インプラントは適切なケアを続けることで長期間安定して使用できる、耐久性の高い治療法です。インプラントが長持ちする理由は、その構造と素材にあります。
顎の骨に埋め込むインプラント体には、チタンという金属が使われます。チタンは人間の体とのなじみが非常に良く、アレルギー反応が起こりにくい素材です。その上に装着する人工の歯も、セラミックやジルコニアといった丈夫で変色しにくい素材で作られます。
着脱する必要が無い
インプラントは顎の骨に直接固定されているため、入れ歯のように毎日ご自身で取り外す必要がありません。まず、お手入れが非常に楽になります。
ご自身の歯と同じように歯ブラシで磨くだけで済み、日々の管理がシンプルになるのは大きな利点です。硬いものや粘着性のあるものを食べても、外れる心配がなく、食事を心から楽しむことができます。24時間ご自身の歯と同じように過ごせるため、精神的な負担が少なく、活動的な毎日を送ることができます。
デメリット
自費診療のため治療費が高い
インプラント治療は自由診療のため、治療費は自己負担となり高額になる傾向があります。
治療費が高額になる理由としては、精密な検査・診断、高品質な材料、高度な技術を要する外科手術、手術室レベルの衛生管理体制などが挙げられます。
ただし、年間の医療費が10万円を超えた場合、確定申告を行うことで医療費控除を利用できます。この制度を利用すると、所得税や住民税の一部が還付される可能性があります。
外科手術が必要となる
インプラント治療は、歯を失った部分の顎の骨にインプラント体(人工歯根)を埋め込むための外科手術が必要です。
手術は局所麻酔をして行うため、手術中に痛みを感じることはほとんどありません。これらの症状は通常、数日から1週間程度で落ち着きます。
ご自身の健康状態でインプラント治療が可能かどうかは、必ず事前に歯科医師に相談してください。必要であれば、かかりつけ医とも連携して安全に治療を進めることが大切です。
インプラント周囲炎のリスクが伴う
インプラントは虫歯にはならないものの、歯周病に似たインプラント周囲炎のリスクがあり、治療後のメンテナンスで最も注意すべき点です。インプラント周囲炎は、インプラント周りの歯ぐきや骨が歯周病菌で炎症を起こす病気で、インプラントを長持ちさせるには、インプラント周囲炎の予防が重要で、毎日の丁寧なセルフケアと歯科医院での定期的なケアが不可欠です。
歯ブラシに加え、歯間ブラシやタフトブラシでインプラントと歯ぐきの境目を丁寧に清掃しましょう。
差し歯のメリット・デメリット
メリット
治療費が安い
差し歯治療の最大のメリットの一つは、費用を抑えられる可能性があることです。
これは、治療に使う素材によっては、公的医療保険が適用されるためです。保険が適用される差し歯は、主に「硬質レジン前装冠」が用いられます。より自然な見た目や長期間の使用に耐える耐久性を求める場合は、保険適用外の素材を選ぶことも可能です。
ご自身の予算や希望に応じて、選択肢が用意されている点は差し歯治療の大きな魅力と言えるでしょう。
外科手術なしで治療できる
差し歯治療は、インプラントのように歯ぐきを切開したり、顎の骨に穴を開けたりする外科手術を伴いません。身体への負担が少ないことは、患者さんにとって大きな安心材料となります。
特に、以下のような方にとっては、差し歯が選びやすい治療法となります。
・ 手術に恐怖心や抵抗感がある方
・全身の持病をお持ちで、外科手術のリスクが高い方
例えば、血糖コントロールが不安定な重度の糖尿病や、骨粗しょう症の治療薬を服用中の方など、手術が難しい場合があります。
すべての処置が外科処置をすることなく完結するため、治療後の大きな腫れや痛みが少なく、日常生活への影響も最小限に抑えられます。
治療期間が短い
差し歯治療は、最終的な差し歯が入るまでの期間がメリットです。インプラント治療では、人工歯根が骨と結合するのを待つ必要があり、全体の治療期間は3ヶ月から1年ほどかかることもあります。
一方、差し歯治療は外科手術がなく、骨の治癒を待つ必要もありません。歯の根の状態が良ければ、根の治療から差し歯の装着まで、通常1ヶ月から2ヶ月程度で完了できます。
お仕事や学業で忙しく、通院回数を減らしたい方にとって、治療期間の短さはメリットとなるでしょう。
デメリット
経年劣化し目立つことがある
保険適用で作る差し歯は、どうしても素材の劣化が避けられません。保険適用の差し歯に使われるプラスチックは、吸水性という大きな性質です。毎日お茶やコーヒー、食事などで、水分や色素をゆっくり吸収し変色します。治療直後は歯と色が合っていても、数年経つと黄ばみが目立ち、歯との差が気になることがあります。
一方、自費診療のセラミックなどの素材は、陶器のように水分を吸収しません。
虫歯のリスクがある
差し歯は自身の歯の根を土台にしているため、差し歯自体が虫歯になることはありませんが、土台の歯が虫歯になるリスクがあります。特に注意が必要なのは、差し歯と歯ぐきの境目で、汚れが溜まりやすい場所です。
被せ物の中で進行する虫歯を「二次カリエス」と呼び、差し歯の土台となる歯は神経が抜かれている場合が多く、痛みを感じにくいため発見が遅れがちです。気づかないうちに虫歯が進行すると、差し歯を支えきれなくなり、抜歯が必要になることもあります。
歯根が割れてしまう可能性がある
差し歯の構造上、最も深刻なデメリットが、土台となる歯の根が割れてしまう「歯根破折」のリスクです。差し歯は、ご自身の歯根に立てた一本の土台(コア)で、噛む力をすべて受け止めます。食事の際の噛む力や、歯ぎしり・食いしばりなどの過度な力が加わると、その負担が歯根に集中します。
インプラントは顎の骨全体で力を支えますが、差し歯は細い歯根一本で支えるため、この歯根破折が最大の弱点と言えます。
インプラントか差し歯で悩んでいる方は、堺市南区の「C&Cナカイデンタルクリニック」へご相談ください
失った歯を補う治療法には、それぞれ異なる特徴があります。最適な治療法は、患者様一人ひとりのお口の状態で全く異なります。これらの判断は、レントゲンや歯科用CTによる精密な検査を行わなければ分かりません。
当院では、まず患者様のお悩みやライフスタイル、将来のご希望を丁寧にお伺いします。そして、インプラントと差し歯を含めた複数の選択肢を公平にご提示し、それぞれの利点だけでなく、注意点や費用、治療期間についても分かりやすくご説明します。C&Cナカイデンタルクリニックは、インプラントで25年以上の治療実績を持っています。まずはLINEでお気軽にご相談ください。無料相談を承っております。
